too far

遠い銀河の向こうから
誰かに呼ばれて振り返る


帰り道の坂の下
空の彼方に一番星


アンドロメダやマゼランの
隣人よりも近い場所


重力よりも強い力で
重たいペダルを強く漕ぐ


登りきった坂の上
おおいと銀河に返事した 




海のみえる家

ぼくが家を建てるなら
部屋は3つあればいい


ものを置く部屋と、
ものを作る部屋と、
寝るための部屋


二階はあるけど使っていなくて
そこには子供が住めばいい


庭には白い花が咲いていて
遠くには小さな海が見える


朝と夕方に汽笛の音がきこえる
近くの森から甲虫のにおいがする


近所には人の良い一家が住んでいて、
そこの中学生が夜にアコースティック・ギターの練習をしている。
ぼくは夏の夜にそれを聴いて、
明日は泳ぎに行こうかな、なんて思うのかな


きみのため

ロックバンド「キンダーガーテン」の曲からぼくの好きな歌詞を紹介します。

――――

暑い幹線道路から 冷たい深海を眺めてた

温度計の数字より体感温度を信じたい

夜がくればこの街もようやく寒くなるらしい

雪が降るでもないけれど雨が降るでもないけれど

太陽の光に遮られ 今朝も星が見えないや

暮れてしまえば街灯の青い光が温かい

ずっと遠いところから君の体温が伝わって

ああどうやらこの世では距離は重要でないらしい

深海魚は暗闇で誰かを求めて叫ぶのか

それとも一人に慣れちゃって、寂しさなんて忘れたか

たった一つの種族から全体なんて見えないよ

光の射さないこの場所じゃ自分の顔も分からない

サイドミラーの世界では絶えず虚像を映し出す

74㎞で景色は絶えず更新される

ずっと遠い昔から君の体温が伝わって

ああどうやらこの世では時間は意味がないらしい


しらないまちであおう

知らない町で会おう
知らない町で、会おう


初めて入る公園で
珍しい遊具に再会するだろう


住んだこともない家を
いつか懐かしく思うだろう


共時性の世界の中で
ぼくらは同じを繰り返す


機能性のデザインは
いつも同じを作り出す


だれかの思い出は、
別の誰かの思い出に似てる
知らない町で、再会しよう 


森の人

いまでは考えられないことですが、むかしは動物と人間が一緒に暮らす町がありました。
彼らは見た目は違っても、互いを敬い仲良く平和に暮らしていました。
しかしある土曜日に、広場で人間はいいました。
「町の一番大きな通りには、人間だけが住むことにしよう」
それを聞いて動物たちは怒りました。通りには動物たちの家もあったのです。
人間と動物は対立しました。人間のなかには「あまりに横暴だ!」と動物の肩を持つ人もいましたが、そんな人も同様に人間たちから疎まれました。


とうとう動物たちは町から追い出されはじめました。
あるものは自分から去り、あるものは耳を掴まれ無理やり放り出されました。
水曜日には町に一人も動物がいなくなりました。
町は人間だけの町になったのです。
そうなってくると厄介なのは動物に優しい人たちでした。
「動物たちが戻ってこられる町にしよう」彼らは毎日広場で声をあげます。
人間たちは動物の皮を持ってくると、動物に優しい彼らに被せました。
そしてこう言いました。
「ここにまだ動物が残っているぞ! つまみだせ!」
動物の皮に包まれた人たちは町から追放されました。
動物の皮を被った人たちは森で暮らしはじめました。


彼らは森では木の実を食べて生きていましたが、冬には友だちである動物を食べてしまいました。
動物は彼らを森の人間と呼びました。
森の人間は木の実と動物を食べます。森の人間は動物を嫌いになったわけではありません。森には森のルールがあり、森の人間も、動物たちも、それを受け入れているのです。
町で暮らす人間たちは、追い出したことをすっかり忘れ、今では森の人間のことを熊と呼んでいます。 


街はいまだに灰色で

街はいまだに灰色で
空は落ちてしまいそうなくらいの青色で
通りすぎるひとたちの 影はとても透明で
なんだか疲れてしまうのです


先を急ぐこどもたち その後ろ姿をケータイのカメラで撮影してみたい
おおきな力の斥力に 弾かれここまで辿り着いた
ありふれたファンタジーのリアリティーばかりが気にかかる
目指していない惑星の軌道に乗って出られない


街は灰色 冷たい空
だれかの熱を求め 夜光虫のように征く 


宇宙

「宇宙」という言葉は「宇」と「宙」が組み合わさった概念だ。
「宇」は空間、「宙」は時間を意味する。
宇宙は時空と言い換えられる。


 物語には必ず時間と空間が存在する。
例えば昔話が始まるときの決まり文句、「むかしむかしあるところに」。
この一文で時間と空間が設定される。
「むかしむかし」で現在ではないと宣言する。
「あるところ」は逆説的にここではないと言っている。
本を開ける人は常に「いまここ」にいるのに、物語の内容は「いまじゃなく、ここではない」なのだ。


 物語とは宇宙を作り出すこと。
作者は限定された時間を限定された場所を創造する。
モチーフがあったり意識をしていなかったとしても、創作物として成立した瞬間に宇宙になる。
映画を撮るとき、そこらの風景を舞台に現代劇として撮ったとしても、それは限定的な宇宙だ。
「いま」を写し撮ったものは一瞬後には「過去」になる。


 古典文学はみんな当時の現代文学だ。
時間の流れる宇宙にいるぼくたちは、本を開くたびに別の宇宙に出会う。
本の中の宇宙は現実とは違う時間、違う場所。
人は電車で座りながら、まったく違う宇宙を観察している。


 クリエーターの創作は、自分だけの宇宙を創造すること。
人間は、天地を創造した神様と同じことをしている。
神様の物語に組み込まれた人間たちは入れ子構造で新たな物語を生み出す。
ある宇宙で暮らす生き物が別の宇宙を作りだし、そうして宇宙は細分化していく。


「ぼくの宇宙」があって、「きみの宇宙」がある。
想像力を持つ魂は、その数だけ宇宙を新たに作り出す。
現実の宇宙は無限に広がっているそうだけど、たしかにそういうものかもしれない。
上位の存在である神様の物語のなかで、人間が多重構造で物語を産みだしていったら、原稿用紙の束はどんどん増えていくだろう。


 ぼくは宇宙の管理人。
ぼくの生んだ愛しい宇宙を守っていく。
時々、別の宇宙からスペースシャトルでやってくるお客さんを待ちながら。 


よいこの川柳

はじめての 習字で書いた 言葉は愛

三日経ち 美味しいカレーも ただの泥

くださいな あなたのつけてる ネックレス

コーヒーが 飲めないけれど 参加する

プリントの 裏に書いた 凱旋門

お~いお茶 呼んでみたけど 用はない

アザラシに エサをあげたら 指噛まれた

たらちねの 母が言った グッナ~イ

ルイ・ヴィトン 逆から読んでも ルイ・ヴィトン

あっそうだ 留守録するの 忘れてた

夕焼けに 消えた二人の 頭文字

シーフード サラダを食べる 渚にて

目隠しし 誰だと訊ねる 声は君

電柱の 陰で死んでる 炊飯器

この星を 癒す我が子 誕生す

忍なら 守って見せろよ この星を

エイリアン 西海岸に 到着す

人類の 気持ちが一つに 「もうだめだ」

あきらめた そのとき現る 影の者

颯爽と 投げる手裏剣 喜望峰

数年後 墓前に現る 例の人

この星は あなたのおかげで 救われた

その女 去った後には 白い花



レトロバイク | このページはカラフルに彩られています 2018
Powered by Webnode
無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう